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秩父札所4番金昌寺の地蔵郡

秩父札所の歴史

一部、「コラム」で紹介した他のページと重なる部分がありますが、秩父札所の開設から現在に至るまでの歴史を紹介してみようと思います。

秩父34ヶ所の観音霊場は、西国33ヶ所、坂東33ヶ所と共に日本百番観音に数えられています。
一巡、約100キロ程の行程で、都心からも近い為、春秋の気候の良い季節には、数多くの巡礼者で賑わいます。

秩父に札所が開かれたのは、文歴元年(1234年)甲午3月18日、13の神仏、皇族、高僧(これを十三権者という)の巡礼に始まると伝えられています。
しかしながら、神仏が巡礼をするとの話からこれらは、作り話の域を出ていません。
従って、「文歴元年甲午3月18日」と、いう年代設定は、作られた物だと思われます。
しかしながら、現在でもこの日を基準にして、12年に1度の午年と、50年毎の総開帳を行っています。

秩父札所の最も古い記録は、長享2年(1488年)の番付(小鹿野町法性寺所蔵)であります。
従って、長享2年以前には、札所が成立していた事になりますが、一般には、札所33ヶ所の観音像17体の製造年代が室町時代である事などから、長享二年をあまり遡らいない室町時代中期と推定されています。

当時は、西国、坂東と同様に33ヶ所で、現在の番付とは異なり、定林寺(現在の17番)を1番札所としていました。
16世紀後半、秩父札所が西国や坂東と併せて巡礼されるようになり、やがて一寺(現在の札所2番の真福寺)が加えられ34ヶ所となりました。
更に江戸からの交通の便を考えて、今の番付になったと言われています。

秩父札所だけ34ヶ所になった背景には、全部で99ヶ所所より、100ヶ所の方が切りが良いとか、西国、坂東に比べて、秩父札所は、歴史が新しく、1ヶ所増やしても1番不都合がないからとの推測もあるようですが、これは、あくまでも推測で、実際の所は、なぜ一寺増やしたのかは、定かではありません。

江戸に幕府が置かれるようになると、江戸からの街道が整備され、それに併せて巡礼道も整えられるようになります。
江戸から秩父に行くには、川越、熊谷、吾野などを通るコースがありますが、いずれも関所がなく、比較的容易に巡礼の旅に出かけられました。
関所を通るには、通行手形を作る必要があったみたいですが、それを作るのは、結構面倒だったのでしょうね。

熊谷市石原の中山道と、秩父の分岐点にある明和3年(1657年)に建てられた道しるべには、

「ちちぶ道 しまぶへ十一り」

とあり、県の旧跡に指定されています。

(札所1番四萬部寺への道しるべ)

ちなみにこう言った札所の道しるべは、秩父市内のあちこちに点在しており、今も巡礼者の道しるべになっています。
車やバイクで巡礼すると分かりませんが、徒歩や自転車での巡礼だったら気が付くと思います。
江戸時代に巡礼していた人々が、

「今自分が見ている道しるべを見ていたんだな」

とか、考えながら札所巡りをするのも楽しいものです。

江戸に信者が増えると、巡礼を促す様に「秩父三十四所観音霊験円通伝」や「秩父巡礼御詠歌」や「秩父道中」などの縁起や案内書などが出版されました。
また、地元では、本尊、縁起、境内等の刷り物を参拝者に配っていました。
特に12年に1度の午年は、総開帳を行い江戸を中心に多くの巡礼者で賑わったそうです。
多い時は、村の人口と同じくらいの巡礼者が訪れ村人は、その対応に追われたと伝えられています。

秩父札所の存続の危機と復興

明治維新となり、維新政府の神仏分離政策などによって、札所は、存続の危機に瀕します。
14番今宮坊や15番蔵福寺は、それぞれ神社が管理していました。
維新後、今宮神社は、秩父神社として、仏教色が取り払われ、そこにいた住職は、神官になり、寺は、廃寺となりました。
しかし、観音信者は、この事態に対し観音霊場の存続を願い出て、今宮坊は独立し、蔵福寺は、近くの少林寺と合併して、秩父札所は、存続しました。

更に明治11年(1878年)の秩父大火の時には、市街地の札所は、ほとんど被災したと言われていて、13番の慈眼寺に至っては、本堂が再建されたのは、明治34年になってからでした。
ちなみに札所15番少林寺は、この時の大火を教訓にし、火事に強い構造の寺にしました。
外壁が蔵の様な感じになっており、火事に強く燃えにくくなっています。
こういう背景を知っていると、訪れた時の印象が変わって来ますので、札所15番少林寺を訪れる機会があったらここに書いてある事を思い出しながら寺を見てみて下さい。

この様に明治以降の宗教統制や文明開化の風潮、秩父大火などにより、巡礼者の数は少なくなって行きました。

太平洋戦争後に札所は、連合会を組織し、東京の百貨店などに寺の寺宝などを展示し、秩父札所を紹介して、巡礼の普及に努めました。
また、各種案内書なども出版され次第に巡礼者の数も増えて行きました。

秩父札所は心の安らぎ

そして、現在に至る訳ですが、個人的には、秩父で一番アピールすべきは、秩父札所だと思います。
秩父札所は、季節に関係なく、秩父の四季折々の自然が楽しめます。
また、秩父札所の多くは、秩父の中心に集まっていますから、交通や宿泊の便は良い方かと思います。
美味しい物も沢山あります。
そして、秩父札所の一番良い所は、気持ちが落ち着き、心が安らぐ事です。
人生いろいろな悩みを持つと思います。
時には、これからの人生を大きく左右させるような決断をしなければならない時もあると思います。
でも、ちょっと待って下さい。
決断を下すのを少し遅らせて、秩父札所に来てみませんか?
信仰心などは、必要ありません。
軽い気持ちで来て下さい。
札所に設置されているベンチにでも座って、四季折々の自然や風の音、小鳥のさえずりなどを聞いて下さい。
そして、ゆっくり流れる時間を体全体で感じ取って下さい。
貴方が秩父札所を離れて家路に着いた時、貴方の中で何かが変わっていると思います。

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